診療予約システム 導入成功を探る (2/2)
− 取るべき対策 −
今度は(1)から(3)で見えてきた問題点についてどのような対策をとるか考えます。
- (1) 患者さんの主な年齢層や性別
- (2) 普段の混雑具合、診察前に並ぶ人がいるか
- (3) 診療の流れ
●インターネット予約を最大限促進する。
1番の「患者さんの主な年齢層、性別」に戻ります。
前述したとおり40代まではほとんどの人がインターネットを利用していますので問題とはならないでしょう。考慮すべきはそれ以降の年代の方です。
資料上は想像以上に利用率は高かったですが、実際にはどうでしょう。まず携帯電話の利用ですが電話とメールのみに使用している人が多くいることが想像されます。実際にはホームページ等を閲覧出来る環境をお持ちでも全く利用していない、もしくは利用出来ることを知らないという可能性があります。
また、年齢層が上がるにつれてインターネットは携帯ではなくパソコンを利用している人が増えるのではないでしょうか。これは文字の見やすさやシニア向けのパソコン教室やテレビ番組が影響しているように思います。
そこで、この結果からインターネット予約の利用を最大化する対策を考えます。
【どなたの携帯電話でも予約出来ることを周知する。】
(その際パケット代が別途かかることをお伝えするのを忘れないで下さい。この年代の方はネット使い放題の契約をしていない可能性が高いので、番号確認を何度も行うと、想像以上の通信費を請求される恐れがあります。)
ただし、この方法は操作方法まで求められる可能性があり逆にスタッフの負担が増加する恐れがあります。従いまして、それが出来ない場合は次の方法をお勧めします。
【パソコンでも予約出来ることを周知する】
携帯電話とパソコンは別物と認識されている方も多いでしょうから、画面の違いはあれど同じことが出来ることを伝えて下さい。
それでも予約出来ない方は多数いらっしゃるでしょう。その方にも不公平感を減らす手立てが必要です。
【電話でも予約が出来るようにする】
窓口の負担は増えますが、インターネット予約の利用促進を引き続き行ってなんとか軽減します。
電話予約の自動応答システムを導入する。ただ、この操作も手間には変わりないので利用が進まない可能性もあります。
【窓口受付用の枠を予め確保しておく】
これについては次のテーマで説明します。
●目的を正しく伝えて不満を減らす
2番目の普段の混雑具合です。前述したとおりインターネット予約を導入すると、競争が激しいところでは数分もすれば10人、20人と予約で埋まってしまう可能性があります。そうでなくとも、窓口で一番に受け付けた人より、後から来た(かに見える)予約の患者さんを先に診察することになります。
これは、待っている側からするとあまり気分のよいものではありません。
対策としてはいくつかあります。
【窓口受け付けを優先する】
インターネット予約の開始を窓口受け付けより少し遅らせます。これにより、並んで受け付けた人からは不満はでないと思います。
ただ、逆にインターネット予約の人の利便性が少し下がるデメリットもありますので、次のような方法も考えられます。
【窓口とインターネット予約を交互に受け付ける】
受付前に予め窓口受付用に、例えば奇数番号だけ確保しておくという方法です。すこしスタッフの手間が増えますが一つの方法だと思います。
【予約システム導入により待合室以外で待っている人がいることを周知する】
これは地味ですが重要です。予約システムはいわば「どこでも待合室」です。ご自身が使っていない場合は運用が変化したことを正しく理解されていない、もしくは理解していても深くは考えていない可能性があります。その状態で後から来た人が先に診察を済ますと気分を害する可能性があります。なので、予約システムを使わない方にも、その目的と内容をハッキリと伝えておくべきでしょう。混雑緩和や感染防止が理由であれば待つ人にとってもメリットなので納得して頂けるのではないでしょうか。
●適切なシステムを導入する
3番目の診察のフローについてです。ここでようやく予約システムについてです。システムには大きく分けて順番予約(番号札を使うタイプ)と時間予約があります。
順番予約が適しているのは以下のような場合です。
- 当日急遽来院が決まる患者さんが多い
- その日中に診察を済ませたい患者さんが多い
- 一人あたりの診察時間が比較的短い
- 一回の診察にかかる時間が予想しにくい
- 呼び出しはほとんどの場合1度だけである
時間予約が適しているのは以下のような場合です。
- 定期的に通う患者さんが多い
- 一人の診察時間が比較的長い(検査やその間の待ち時間を含めた時間)
- 一回の診察にかかる時間が予想しやすい
- 当日診察にこだわらない
- 検査等により何度か呼び出しを行うことが多い
これらの適正と先ほどのパターンを照らしてざっくり分類すると、
- A. 患者さんを順番に呼び出して診察を行う。→順番予約
- B. 事前に検査を行ってから順番に診察を行う。→時間予約、または順番予約
- C. 同時に複数の患者さんの診察を行う。→時間予約
- D. 診察→検査→診察という順に行う。→要検討
ちなみに、時間予約を採用している場合でも実際には時間通り診察を行うのではなく、30分、1時間の間に複数の受付を行い、来た人から順に診察を行うといった形が多いようです。そういう意味では細かく時間を区切った順番予約ともいえるかもしれませんので、その点を患者さんにはしっかり伝えておくことが必要です。そうでなければ患者さんは間違いなく時間通り診察してくれると思ってしまいます。
で、Dのパターンですが、時間予約を採用しているところが多いですが、診察時間を見極めるのが難しすぎて実際はなかなかうまくいっていません。
そういう意味ではまだ、時間枠を区切った上で順番予約を採用した方がましかもしれません。その方が「時間通りに診察してくれない」といった不満を減らすことができます。一時間、二時間と待合室で待たされることも無くなります。場合によっては、1回目の診察と2回目の診察でそれぞれ順番をとるといった方法でも良いかもしれません。安心してその場を離れられるというのは大きなメリットです。
最後に
以上の特徴を踏まえ実際の現場に即したシステムの導入と運用を検討し、それが実現可能なシステムを選定します。業者に運用方法を伝えることでそれが実現可能か回答してくれるはずです。
繰り返しになりますが、患者さんに導入の目的と何が変わるのかをしっかり伝えて、不公平感を無くしていくことが重要です。ただ、そこに機械があるだけでは中々浸透しません。
以上、最後までお読み頂いてありがとうございます。